yum-mil-kick (よむ・みる・きく)

日々のつぶやき転載日記だったけど、はてながTwitter連携停止するそうなので、ここは跡地になりました。

おくつをそろえませう(my日本日記転載)

2011年2月12日付けで、SNS「my日本」に書いた日記です。

2月11日には江戸東京博物館に行ってきました。


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「体験コーナー」ができる、立ち入り可能な民家レプリカの縁側に
「おくつを そろえませう」と書かれた立て札が置かれているのが印象的でした。
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まずはここからなんじゃないかなーと。


ミュージアムショップに、「文部省 児童用 尋常小學修身書 巻一」の大正7年版と昭和9年版があったので、各1冊ずつ買ってみました。


内容に被りが多いですが、昭和9年版は図版がカラーであることと、戦時での心得なのか「忠孝」を推す内容になっていたり、指導内容やその表現と順番、ウェイトのかけ方に様々な違いが見られて面白かったです。


うちのじいちゃんばあちゃんに教えてもらったのは、
おそらく大正7年版でのしつけだと思う。



写真はすごいピンボケだったので色々加工したら、
看板がかなりホラー風味になりました。
反省なんかしません!

>S****さん
たくさんの人の興味を引くような
特に大きな違いといえば、やはり「チュウギ」の項目についてでしょうか。


大正7年版
 全25項目中、17番目に「チュウギ」が位置し、
該当ページの上段に解説文、下段に挿絵が入っています。

  十七

キグチコヘイ ハ テキ ノ
タマ ニ アタリマシタ ガ、
シンデモ ラツパ ヲ
クチ カラ ハナシマセン
デシタ。

片面1ページのみでした。
相対するページのテーマは「アヤマチ ヲ カクス ナ」でした。


本文全18ページ中の真ん中となる9ページ目が
「テンノウ ヘイカ」となっていて、中綴じだと真ん中をパッと開くと左側に
「テンノウ ヘイカ バンザイ。」の文字が
目に焼き付く仕様になっていたのだと思われます。 ←私の想像です
その次のページに「チュウギ」があります。


右側のページは上下二段になっていて、
上段は「キヤウダイ ナカ ヨク セ ヨ」
下段は「カテイ(家庭)」の挿絵だけとなっています。


この真ん中のページを境目にして、
挿絵を見ながら先生のお話を聞く授業形態から
挿絵に添えられた文章を読み、先生のお話を聞くという授業形態への
切り替えもされるという区切りになっているのではないかと思いました。 ←あくまでも私の想像です


昭和9年版
(この復刻版教科書は昭和9年〜15年まで使用されたものだと書かれていましたが、奥付をよく見ると、昭和11年に修正印刷が行われたものだと書かれていました)
 全27項目中、26番目に「チュウギ」が位置しています。
そして見開きページの上段に解説文、下段に挿絵が入っています。

キグチコヘイ
ハ、 イサマシク
イクサ    ニ
デマシタ。

      • -

テキ ノ タマ 
ニ アタリマシタ 
ガ、 シンデ モ、
ラッパ ヲ クチ
カラ ハナシマセン
デシタ。


こちらの教科書には「テンノウ ヘイカ」の項目はありません。
ただし、教科書の表紙をめくり、その次のとびらページをめくると、
大正7年版の「テンノウ ヘイカ」の挿絵をもとに大きく書き直された
見開きのカラー図版が印刷されています。
また、大正7年版では右下隅に描かれていたお見送りの民衆の絵が
ココでは消えていました。


教科書の最初と最後の見開きで「テンノウ ヘイカ」「チュウギ」を
それぞれ強く印象づけようという工夫がされているようです。


しかし……「イサマシク イクサ ニ デマシタ。」のとってつけた感と、
その下に撃たれてのけぞっているキグチコヘイの違和感ったら強烈です。
さらに左ページの挿絵は闇に紛れる不気味な敵陣の影……。
ぶっちゃけ手抜きの挿絵です。薄墨のみの着色のようですし。
見開きにする意味は……戦時下だから、としか思えず。


その次のページで1年生で教わる教科は終了するのですが、
その挿絵の中に、修了証書を渡している先生の背後に
「忠孝」の文字が入った額が飾られていました。
(大正7年版には額自体が書かれていませんでした。
 これは単に学校の校舎の建築様式の変化によるところが大きいようです)


とりあえず、書いてみましたがいかがでしょうか?

>S****さん
こちらこそありがとうございます。
教科書の分厚さも、大正7年版より昭和9年版の方が倍増しているのですが、
読んでみると、1ページ全面を挿絵にしたページがあるからか、という
印象が強いです。


挿絵のみで、最初の頃に教えられる項目が
大正7年版の方が多く、昭和9年版では「音読する項目」がかなり増えていました。
大正7年版では
「モノ ヲ ソマツ ニ アツカフ ナ」
「イキモノ ヲ クルシメル ナ」など一読すれば頭に入る項目が、
昭和9年版では
「モノ ヲ ダイジ ニ」
「イキモノ」などと省略されて曖昧になっている
という点は、
S***さんの書き込みで腑に落ちました。


項目を全体的に見渡すと「セ ヨ」「スルナ」を省略しているから、とも思えますが、
実は挿絵がとても抽象的なものに変わっていたり、
解説・挿絵ともに全く別のものに差し替えられたものもありました。


また、大正7年版にあった、
「ジコク ヲ マモレ」
「ナマケル ナ」
「ギヤウギ ヲ ヨク セ ヨ」の項目が
昭和9年版からは消えていたのも、何気に大変革(改悪)だと思いました。